疲れた心身をリセットする「いまここ」の力

夜中にふと目が覚める。

「このまま仕事を続けていて大丈夫だろうか」
「この先、どうなってしまうんだろう」

そんなことを考え始めると、頭の中はあっという間に未来の不安でいっぱいになります。

でも、そんなときにふと窓を開けて、外の空気を感じる。
足の裏の感覚を感じる。
ゆっくり息を吐く。

すると、不安そのものが消えたわけではないのに、少しだけ「今」に戻ってこられることがあります。

脳のエネルギーを奪う「持ち越し苦労」と「取り越し苦労」

私たちは一日のうち、どれくらい「今、目の前のこと」に集中できているでしょうか。
頭の中で考えていることのほとんどは、「あの時ああすればよかった(過去への後悔=持ち越し苦労)」か、「明日失敗したらどうしよう(未来への不安=取り越し苦労)」だと言われています。

そもそも、なぜ人間の脳は放っておくと過去や未来のことばかり考えてしまうのでしょうか。それは、生物としての生存戦略(自己防衛)に由来します。
人は、過去のことを後悔したり、まだ起きていない未来を心配したりします。
私自身も、気がつくと頭の中で何度も同じことを考えていることがあります。

こうした「過去や未来へ意識が飛んでしまう状態」については、脳科学の分野でも研究されています。そこで重要になるのが、「いまここ」に意識を戻すという考え方です。


悪循環を断ち切る「いまここ」というアプローチ

私にとって「いまここ」とは、
不安をなくすことでも、嫌なことを忘れることでもありません。
今、自分の身の回りに実際に存在しているものへ意識を戻すことです。

窓から入ってくる風。
鳥の声。
足の裏の感覚。
自分の呼吸。

そういう「今、ここにあるもの」に意識を向けるだけです。

「これは心理学・マインドフルネスなどでも用いられている考え方です」

「いまここ」を取り戻す、3つの身体的アプローチ

私は仕事柄、患者さんのお悩みをお聞きする立場にあります。
寄り添い共感するあまり、私自身も過去の辛い体験や将来への不安に意識が引っ張られてしまうことがよくありました。

今回は、そんな風に意識が過去や未来へ飛んでしまいそうになった時、私自身が試して効果のあった「身体感覚を使って『いまここ』に戻る方法」をいくつかご紹介します。整体師の視点からもおすすめのアプローチですので、ぜひ無理のない範囲で試してみてください。

足裏のグラウンディング(足裏で「今」を感じる)

椅子に座った状態でも立っていても構いません。足の裏全体が、しっかりと床についている感覚に全神経を集中させます。体重が乗っている重み、床の硬さや温度などをじっくり味わいます。頭に上っていた気が、足元(現在)にスッと降りてくるのを感じられるはずです。

呼吸の観察

深呼吸をしてリラックスしようと力む必要はありません。
ただ、普段通りにしている呼吸の「体の動き」に注目します。
息を吸う時にお腹が膨らむ感覚、鼻の奥を通る空気の冷たさなど、体の物理的な変化をただ感じ取ります。途中で別の考えが浮かんでも、「あ、今それたな」と気づいて、再び呼吸に意識を戻せば大丈夫です。

5-4-3-2-1法(感覚のカウント)

不安が強くなりそうな時、周囲を見渡して以下のものを探します。

  • 目に見えるものを「5つ」探す
  • 肌で触れられるものを「4つ」触る(服の布地や椅子の背もたれなど)
  • 耳で聞こえる音を「3つ」聞く
  • 匂いのするものを「2つ」嗅ぐ
  • 口の中の感覚(味)を「1つ」感じる

五感をフル稼働させることで、脳の処理能力を「いま」に引き戻します。

おわりに:体からのアプローチで本来の元気を取り戻す

私たちは、過去を変えることも、未来を完全にコントロールすることもできません。
でも、今この瞬間に呼吸することはできます。
足の裏の感覚を感じることもできます。
窓を開けて、風を感じることもできます。
もしかすると「いまここ」とは、特別なことではないのかもしれません。

疲れたときほど、遠くへ行こうとせず、
今、自分がいる場所に戻ってくる。
それだけでも、心と身体は少しずつ緊張を手放してくれるのかもしれません。

心身の緊張が長く続いていると感じる方は、身体の状態から一緒に見直してみるのも一つの方法です。

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