
夜中に目が覚めて、これからのことを心配してしまう。
「あのとき、ああすればよかった」と過去のことを何度も考えてしまう。
そんなときに、窓を開けて外の空気を感じたり、足の裏の感覚を感じたり、呼吸に意識を向けたりすることで、少しずつ「今」に戻ってくる。
以前の記事では、そんな身体感覚を使って「いまここ」に戻る方法をご紹介しました。
では、そもそも――
なぜ私たちは「いまここ」から離れてしまうのでしょうか?
そして、イライラや不安に襲われているとき、脳の中では何が起きているのでしょうか?
今回は、そのことを考えるうえで興味深い考え方を提唱している、脳神経解剖学者のジル・ボルト・テイラー博士について取り上げます。
博士は自身が脳卒中を経験したことで、普段は意識することのない脳の働きを、まったく違った角度から体験しました。
そして、私たちの脳の働きを理解するために、非常にユニークな**「4つのキャラクター」**というモデルを紹介しています。
「どうして同じことを何度も考えてしまうんだろう?」
「なぜ、ちょっとしたことでイライラしてしまうんだろう?」
そんな疑問を、脳の仕組みという視点から見ていきましょう。
🧠 脳の中にいる「4つのキャラクター」とは?
これは、医学的に「4つの人格が存在する」という意味ではありません。
あくまでも、自分の中にある異なる心の働きを分かりやすく理解するためのモデルです。
私たちは毎日の生活の中で、意識することなく、これらの働きを行ったり来たりしていると考えると分かりやすいでしょう。

キャラ1:きっちりリーダー
左脳・思考
計画を立てる。
仕事を進める。
物事を整理する。
論理的に考える。
「次はこれをやらなければ」
「こうしたほうが効率的だ」
と考える、しっかり者です。
社会生活を送るうえでは、とても重要な働きです。
仕事でも家庭でも、このキャラクターがいてくれるからこそ、私たちは物事を計画し、実行することができます。
キャラ2:お悩み注意報
左脳・感情
今回のテーマで、特に注目したいのがこのキャラクターです。
「失敗したらどうしよう」
「あのとき、あんなことを言わなければよかった」
「また同じことが起きたらどうしよう」
過去を振り返ったり、未来を心配したりする働きです。
一見すると「悪いキャラ」のようにも思えますが、決してそうではありません。
危険を予測し、自分を守ろうとする大切な仕組みでもあります。
ただ、このキャラクターが長時間働き続けると、
過去の後悔や未来の不安を、頭の中で何度も再生してしまうことがあります。
そして、ここが以前お話しした「いまここ」から離れてしまうことともつながってきます。
キャラ3:わんぱく自由人
右脳・感情
遊び心。
好奇心。
ユーモア。
創造性。
「面白そう!」
「やってみよう!」
と、今この瞬間を楽しむ感覚です。
子どものころは自然にできていたことでも、大人になるにつれて、
「そんなことをしている場合じゃない」
「もっとちゃんとしなければ」と、自分で制限してしまうことがあります。
何気ないことで笑ったり、好きなことに夢中になったりする時間も、心にとっては大切なのかもしれません。
キャラ4:静かな安心
右脳・思考
そして、もう一つのキャラクターが「静かな安心」です。
今この瞬間に意識を向ける。
周囲とのつながりを感じる。
自然の中で、ただ風を感じる。
空を見上げて、「きれいだな」と感じる。
そんな、頭の中の考えや心配から少し離れた状態です。
前回の記事でご紹介した「いまここ」という感覚とも、つながってきます。

現代人は「キャラ1」と「キャラ2」に偏りやすい?
仕事、家事、人間関係、将来のこと。
私たちは毎日、たくさんのことを考えています。
気がつけば
「次は何をしなければいけない」
「もっと頑張らなければ」
「あの人はどう思っているだろう」「失敗したらどうしよう」
と、頭の中が休まらない状態になっていることがあります。
特に真面目な人ほど、キャラ1とキャラ2が活発になりやすいのかもしれません。
仕事をしているときだけなら、それほど問題ではありません。
しかし、仕事が終わっても頭の中で仕事を続けている。
布団に入ってから、今日あったことを何度も思い返す。
まだ起きてもいない明日のことを心配する。
こうなると、体もなかなか休まりません。
⏳ 怒りや不安の「90秒ルール」とは?
ここで、ジル・ボルト・テイラー博士の話の中でも特に有名な**「90秒ルール」**について触れてみましょう。
博士は、感情が引き起こす身体的な反応について、
感情が生じたときの生理的な反応は、約90秒で一巡する
という趣旨の説明をしています。
ただし、ここは少し注意が必要です。
これは「どんな怒りや不安も90秒経てば必ず消える」という意味ではありません。
感情には、その後に続く「考え」があります。
例えば誰かに嫌なことを言われたとします。
最初に「嫌なことを言われた」という感情が起こります。
ところが、その後も頭の中で
「どうしてあんなことを言うんだ」
「あんな言い方をしなくてもいいじゃないか」
「また今度、同じことを言われたらどうしよう」
と考え続けることがあります。
すると、最初の出来事が終わったあとも、私たちは頭の中でその出来事を何度も再生することになります。
つまり、感情が生まれることと、その感情について考え続けることは、同じではありません。ここに気づくことが、「感情に飲み込まれない」ための一つのポイントになります。

では、実際にイライラや不安を感じたとき、どうすればよいのでしょうか。難しいことをする必要はありません。
ポイントは、感情を無理に消そうとしないこと。
そして、「今、自分の中で何が起きているのか」に気づくこと、です。
STEP 1 まず「感情が動いている」と気づく
イライラしたとき、「イライラしちゃダメだ」と押さえ込もうとするのではなく、「あ、今イライラしているな」と気づく。
不安なら、「今、不安を感じているな」で構いません。
自分の感情を一歩引いて眺めるような感覚です。
STEP 2 90秒間、感情を観察してみる
ここで、すぐに反応しないことを意識します。
何か言い返したくなっても、すぐには行動しない。
頭の中で相手を責めたくなっても、その考えにすぐ乗らない。
まずは呼吸を感じます。
胸やお腹の動き。
鼻から入ってくる空気。
息が出ていく感覚。
「今、自分の体はどうなっているだろう?」と観察してみます。
感情を消すのではなく、「感情の波がやってきている」くらいに捉えてみましょう。
STEP 3 五感を使って「いまここ」に戻る
そして、ここで以前の記事とのつながりが出てきます。
目の前にあるものを見る。
音を聞く。
足の裏を感じる。
呼吸を感じる。
香りを感じる。
温度を感じる。
つまり、五感を使って「いまここ」に戻ってくるのです。
これは以前の記事でご紹介した「5-4-3-2-1法」などともつながります。
頭の中で考え続けるのではなく、現実に今ここにある身体感覚へ意識を戻します。
🌿 「キャラ4」に戻るために、できること
「キャラ4」という言葉を、難しく考える必要はありません。
例えば、
窓を開けて外の空気を感じる。
空を見上げる。
好きな音楽を聴く。
温かいお茶を飲む。
ゆっくり歩く。
鳥の声を聞く。
そして、「まあ、今はいいか」と、一度肩の力を抜いてみる。
それだけでも構いません。
前の記事でお伝えした、「今、自分がいる場所に戻ってくる」という感覚です。

💆 心と体は、切り離して考えられません
ここまで読んで、「頭では分かっているけれど、どうしても気持ちが落ち着かない」という方もいらっしゃるかもしれません。それは、意志が弱いからとは限りません。
ストレスを感じているときには、呼吸が浅くなったり、肩や首に力が入ったりするなど、身体にも変化が起こります。
反対に、肩や首、背中などが長時間緊張していると、それが不快感やストレスの感じ方に影響することもあります。
つまり、心と体は、完全に別々のものとして考えることはできません。
だからこそ、心が疲れているときには、体にも目を向けてみる。
体が緊張していると感じたら、まず体を休ませてみる。
そんな両方からのアプローチも大切です。
🌱 心を整えることは、体をいたわることから始まることもある
当院では、肩・首・背中・腰などのお体の状態を確認しながら、筋肉や関節の緊張を整えていきます。「最近、ずっと体に力が入っている気がする」
「肩や首の緊張がなかなか抜けない」
「疲れているのに、休んだ気がしない」
そんなときには、心だけの問題として考えず、体の状態にも目を向けてみてください。
体がゆるむことで気持ちが楽になることもあります。
また、気持ちが落ち着くことで、体の緊張が和らぐこともあります。
心と体。
どちらか一方だけではなく、両方から自分自身をいたわってあげる。
それも、毎日を穏やかに過ごすための一つの方法ではないでしょうか。
まとめ|「いまここ」に戻ることは、自分を取り戻すこと
今回ご紹介した「脳内4つのキャラクター」や「90秒ルール」は、脳の働きや感情を理解するための一つのモデルです。
大切なのは、怒りや不安を「なくさなければ」と頑張ることではありません。
まず、「あ、今、感情が動いているな」と気づく。
そして、
呼吸を感じる。
五感を使う。
身体感覚に意識を戻す。
そうして、少しずつ「いまここ」に戻ってくる。
前の記事でもお伝えしたように、私たちは過去を変えることも、未来を完全にコントロールすることもできません。
でも、今この瞬間に呼吸することはできます。
足の裏の感覚を感じることもできます。
窓を開けて、風を感じることもできます。
「いまここ」とは、もしかすると、特別な場所ではないのかもしれません。
疲れたときほど、遠くへ行こうとせず、「今、自分がいる場所に戻ってくる」こと。
そして、心だけでなく体にも目を向けてみること。
それが、心身の緊張を少しずつ手放していくきっかけになるかもしれません。
心も体も、「ちょっと疲れているな」と感じたときは
どうぞお気軽に柏長生館高城整復院へご相談ください。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。




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